than のあとに置くもの|英語の比較構文で最も大事な「比較対象」の理解

比較の文章は英作文でも大活躍する基本構文ですね。

比較級(–er / more –)自体は多くの人が使えていますが、地味に多いのが than の後ろに置く要素のミスです。

  • The population of Japan is larger than Germany.
  • You can go there faster by taxi than subway.

日本語では「日本の人口はドイツより多い」「地下鉄よりタクシーの方が早く行ける」で成立してしまうため、名詞部分だけ抽出して than の後ろに置いてしまう人が多いのですが、than の後ろには「比較対象」が来ます

上の例で言えば、「日本の人口」と比較しているのは「ドイツ」ではなく「ドイツの人口(that of Germany)」。「タクシーで」と比較しているのは「地下鉄」ではなく「地下鉄で(by subway)」です。

  • The population of Japan is larger than that of Germany.
  • You can go there faster by taxi than by subway.

比較構文で大事なのは、何と何を比べているのかというこの「比較対象」の理解です。

これが理解できれば上のようなミスは無くなりますし、than の後ろに何を置けばよいか?という疑問は無くなります。

今回は、この「比較対象」について詳しく解説していきます。これがマスターできれば比較構文は怖くなくなりますよ。^^

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than の後ろに置くものは「比較対象」

比較とは、「何か(A)」「何か(B)」を比べることですね。

比較の文章を書くときは、この A B 、すなわち「比較対象」の理解が肝になります。なぜなら、than の後ろに置くのは「比較対象」だからです。

比較の文章ではthanの後ろにはAとの比較対象を置く

比べる対象というのは、「同列のもの」でないといけません。「Aさんの体重」と「Bさんの体重」は比較できますが、「Aさんの体重」と「Bさんの身長」は比較できませんよね?

当たり前じゃないか、、、と思うかもしれませんが、この理解が本当に大事なんです。

冒頭でお話しした通り、日本語の文章を表面的に見ているだけだと失敗します。日本語では省略が多いからです。

表面的な日本語ではなく、何と何を比較しているのかを考えること

例えば、「紙の辞書で調べるよりスマホの辞書の方が早い」という文章を考えてみましょう。

別におかしくないですし、この文章で言いたいことは分かりますよね。では、比較しているのはでしょうか?

スピードを比較しているのですから、「紙の辞書で調べる」vs.「スマホの辞書で調べる」ですね。英文和訳的な極めて不自然な日本語にすると、「紙の辞書で調べるよりスマホの辞書で調べる方が早い」と言い換えることができます。

よくある間違いが、日本語を表面的に読んでしまうケース。文字通り「紙の辞書で調べる」vs.「スマホの辞書」と読んでしまい、than の後ろに「スマホの辞書」と書いてしまうパターンです。

これだと、片方は行為(手段)でもう片方はモノの名称なので同列ではなく、比較対象として不適切ということは分かりますか?スピードを比較したいなら、どちらも行為(手段)じゃないと比べられないですよね?

日本語の文章では、「で調べる」がくどいから省略されているだけなのですが、表面的にしか見ていないと、than の後ろに「スマホの辞書」と書いてしまいがちです。than の後ろには「比較対象」を書かなければなりませんので、正しくは「スマホの辞書で調べる」としなければなりません。

日本語を頼りにするのではなく、何と何を比べているのかを考えましょう。これが比較の文章を作る上で最も大事なポイントです。

比較の文章のポイント

おさらいです。

英語の比較の文章では、than の後ろには A との比較対象である B を書きます。A B は比べる対象なので、同列のもの(例:同じ形、同じレベル、同じ意味単位)のものになるはずです。

比較の文章ではthanの後ろにはAとの比較対象Bを置く

比較対象のイメージを例文で確認しましょう

ここからはひたすら例文を見ながら、上で解説した「比較対象」のイメージをクリアにしていきましょう。

主語の比較

主語(○○が/○○は)同士を比較する場合は、than の後ろは比較対象となるモノ、すなわち「名詞」を置くだけでいいため、あまり迷うことは無いと思います。

Planes are faster than bullet trains.
飛行機は新幹線より速い。

Germany has a smaller population than Japan.
ドイツは日本より人口が少ない。

This facility has a larger pool than our gym.
この施設には、私たちのジムより大きなプールがあります。

下のように主語にかかる形容詞を比較級にする場合、「than + 比較対象」までが文の主語の位置に来ます。

More women than men considered this problem serious.
この問題を深刻に考えているのは、男性よりも女性の方が多かった。

More children than adults actively use this application.
大人よりも子供の方が積極的にこのアプリケーションを利用しています。

接続詞の than の働きから考えると、「than の後ろの名詞以降は主節の要素と同じため省略されている」と考えることができますが、気にしなくていいです。

Planes are faster than bullet trains are fast.

「than は接続詞が正しく、than me などの前置詞用法は口語などで使われる例外だ」と解説しているサイトもありますが、言語学的には than にはもともと接続詞と前置詞の二つのルーツがあったとする説が有力です。

このあたりの極めてどうでもいいことを私は以前研究し、古英語まで遡って than の変遷を調べたことがあります(←暇人)。

than には接続詞と前置詞の2つあると考えるのが妥当ですので、無理に全て「接続詞」として説明しようとする必要はありませんし、前置詞用法も決して「例外」ではなく、堂々と「正しい」用法と考えた方が良いと思います。(実用においては極めてどうでもいいことなんですけどね。笑)

動名詞・不定詞

比較対象の部分には動名詞や不定詞も使用可能です。

下は動名詞の例文ですが、「A = オンラインで学ぶこと」「B = 本で学ぶこと」はどちらも「学び方」なので比較可能ですね。

Learning online is more efficient than learning with books.
本で学ぶより、オンラインで学ぶ方が効率的です。

B に「books」だけを書いてしまう人がいますが、「A = オンラインで学ぶこと」と「B = 本」では、B に言葉が足りな過ぎて比較対象としては不適切です。比較対象はあくまで、「本で学ぶこと」のはずです。

  • Learning online is more efficient than books.

下は不定詞を用いた意味上の主語(名詞句)を比較している例です。比較しているのは「A = タクシーを使うこと」「B = レンタカーを使うこと」。どちらも行為で、比較可能ですね。

It is less costly to take a taxi than to rent a car when traveling around here.
このあたりを移動するときは、レンタカーよりもタクシーを利用したほうがコストがかからない。

主語が「~の○○」のとき

比較対象の主語 A が「~の○○」となっている場合は要注意です。比較対象の B も「~の○○」となるはずだからです。

比較の文章ではthanの後ろにはAとの比較対象を置く

下の例文の場合、比較対象は「A =ドイツの人口」「B = 日本の人口」ですね。

The population of Germany is smaller than that of Japan.
ドイツは日本より人口が少ない。

B に「Japan」と書いてしまう人がたくさんいますが、「ドイツの人口」vs.「日本」だと意味不明なので要注意です。

下の場合も同様に、比較対象はあくまで「A = この施設のプール」「B = 私たちのジムのプール」。プール同士の比較です。

The pool in this facility is larger than that in our gym.
この施設のプールは、私たちのジムのものより大きいです。

次は、「A = 日本の人々」「B = 韓国の人々」との比較ですね。日本語の「韓国に比べて」に引っ張られて、”than Korea” としないように注意しましょう。

People in Japan seem to have less interest in their own culture than those in Korea.
日本の人々は、韓国に比べて自国の文化に対する関心が低いようです。

上の例で見た通り、「~の○○」という場合は、○○の部分が繰り返しになりますので、名詞(population, pool, people)をそのまま繰り返すのではなく、単数名詞の場合は that を、複数名詞の場合は those を用います。

  • than the population of Japan ⇒ than that of Japan
  • than the pool in our gym ⇒ than that in our gym
  • than people in Korea ⇒ than those in Korea

目的語の比較

目的語を比較することもありますよね。目的語なので、どちらの要素も名詞句(名詞、代名詞、動名詞、不定詞)にします。

I like hamburgers at this restaurant better than those at the cafe.
私はあのカフェのハンバーガーよりこのお店のハンバーガーの方が好きです。

My sister likes staying home during weekends than going out.
姉は、週末は外出するより家にいる方が好きです。

修飾語・補語の比較

比較対象の A が主語でない場合、B に前置詞などを入れ忘れるケースが多いので注意が必要です。

ただ、A の場所が変わっても考えることはひとつだけ。「何と何を比較しているのか」という一点だけです。

AB を同列のものにする」というルールは変わりませんので、何と何を比べているのかさえ分かれば、B に置くべきものは自ずと決まります。

主語以外の位置にある要素を比較するときの構造

例えば下の例文では、「by plane(飛行機で)」と比較するものは同じく「移動手段」にならないといけませんので、「by bullet train(新幹線で)」が正解になります。

日本語だけ表面的に見ていると、手段の「by」を落として「than bullet train」としてしまいがちですので注意しましょう。

You can travel to Fukuoka by plane faster than by bullet train.
福岡へは、新幹線よりも飛行機の方が早く移動できます。

We can communicate better in English than in Japanese.
日本語よりも英語の方がコミュニケーションが取りやすい。

More users access our website via smartphones than via computers.
スマートフォンからのアクセスは、パソコンからのアクセスよりも多くなっています。

下のような文でも、higher in women than men としてしまう間違いが多いですが、比較対象はあくまで「女性で」と「男性で」ですよね。B には A と同じように前置詞が必要です。「in」の入れ忘れに注意しましょう。

The response rate was higher in women than in men.
回答率は男性より女性の方が高かった。

同列の考え方

なお、同列というのは意味単位や構造で考えます。必ずしも同じ前置詞を使わないといけないという訳ではありません。

例えば下の例文では、AB に使われている前置詞は異なりますが、「A = ウェブから」「B = 電話で」と、どちらも「手段」となっています。いずれも副詞的修飾語で同じ意味役割なので、比較対象として全く問題ありません。

It is easier to book a seat through the website than by phone.
電話よりもウェブサイトからの方が、座席の予約が取りやすくなっています。

下の場合は、「A = 図書館で」「B = ネットで」という場所が比較対象になっています。A は前置詞句で B は副詞のため構造が違うじゃないか!と思うかもしれませんが、どちらも場所を示すフレーズ(副詞的修飾語)で意味役割は同じなので、こちらも問題ありません。

You will find references more quickly at this library than online.
ネットで探すより、この図書館で探す方が早いです。

形容詞句を比較する場合も、意識するのは「何と何を比較しているのか」だけです。

Children were more in the classrooms than on the playground.
子どもたちは、運動場よりも教室にいることが多かった。

She looked sad rather than angry.
怒っているというより、悲しそうな顔をしていた。

than の後ろで主語を省略するケース

英語の比較文では上で説明した「同列」の理解が基本になります。

ただ、比較対象に「時を表す語」や「予想より、想定より」などが来る場合は、than 以下に省略が起きます。是非、この省略パターンも使えるようしておきましょう。

歴史的な成り立ちは主語の I や it was の省略だったのかもしれませんが、こちらに関しては歴史コーパスを辿って調べたわけではないので、本当にその説明が正しいのかどうか私には分かりません。

このあと紹介するものは、もう省略後の形がスタンダードになってしまっています。無理に「省略の過程」を後付けで説明する必要などないと思いますので、慣用的なものとしてパターンとして覚えてしまいましょう。

使う分にはそれで何の不都合もありませんよ。

時を表す語が来る場合の省略

以前より(than before)、過去より(than in the past)、今日より(than today)、昨日より(than yesterday)などの「時間軸」が比較対象となる場合、than の後ろには時を表す語が残ります。

than it was before のように主語・動詞は省略されていると考えられますが、初めから前置詞だった可能性も否定できません。
後付けの説明に意味は無いので、時を表す語の場合は慣用的にこうやってシンプルに表せるんだということをインプットしましょう。

Our work productivity is much higher than before.
仕事の生産性は以前より格段に上がりました。

The acceptance rate has become higher than in the past.
合格率は以前より高くなりました。

Ten years ago, changing jobs was less accepted in Japan than today.
10年前の日本では、転職は今ほど受け入れられていませんでした。

時間軸が比較対象となっている場合でも、used to のように動詞/助動詞を使っている場合は省略しません(省略すると過去を意味する語が残らなくなってしまうため)。

The living room looks more comfortable than it used to be.
リビングは以前より快適になったように思います。

予想より/想定より

「思ったより」「想像していたより」のようなものを「比較基準」とする場合もありますよね。

このような文章では、主語を省略せずに「思っていたより(than I thought)」、「聞いていたより(than I heard)」、「想像していたより(than I imagined)」のように書くことができます。

This book is more educational than I thought.
思っていた以上に勉強になる本です。

The problem is much more complicated than I heard.
この問題は、私が聞いていたよりもずっと複雑です。

The story was much more touching than I had imagined.
想像していたよりもずっと感動的なストーリーでした。

慣用的に省略で使われるケース

上のように主語・動詞を書いてもよいのですが、「expected」「imagined」「reported」などは、主語の I や it was を省略して書く方が一般的です。

他にも主語を省略して使える動詞はありますが、そういう慣用的使用を許容する動詞を網羅したリストを私は持っていないため、厳密な定義は分かりません。ここでは、よく使うものを挙げておきますね。

「than expected」や「than reported」などは見かけるだけでなく実際に書く機会も多いと思いますので、覚えておくと便利ですよ。

The sales of this product were incredibly higher than expected.
この製品の売れ行きは、予想をはるかに超えるものでした。

The performance of this program was much better than imagined.
このプラグラムの性能は想像をはるかに超えるものでした。

The prevalence of insomnia in this population was much higher than previously reported.
この集団における不眠症の有病率は、これまでの報告よりもはるかに高いものであった。

The rate of car accident this year was significantly lower than estimated.
今年の交通事故発生率は、推定値よりもかなり低いものでした。

The customers’ opinions were much more favorable than anticipated.
お客様の声は、予想以上に好評でした。

おわりに

形容詞や副詞の比較級は作れても、than の後ろに何を置いたらよいか迷ってしまう人、自信が無い人は多いです。

英語の比較において重要なのは、「何と何とを比較しているか」—この一点に尽きます。比較対象さえクリアになれば、than の後ろに置くべきものは自ずと決まります。

比べるものというのは当然、同列のものでなければいけません。日本語の訳文だけを見ていると勘違いしてしまうことも多いので、「何と何との比較なのか」を自分で考えるようにしてみてくださいね。

比較の文章が迷いなく作れるようになると、英語のライティングはとても楽になります(何かを説明するときには比較や対比は欠かせませんから)。

比較対象のイメージが曖昧だった方は、是非例文を参考に一度整理してみてくださいね。

参考

比較構文は倍数表現にも欠かせません。英語での倍数の表し方は下記で説明していますので、気になる方はチェックしてみてください。

than は、「以上」「以下」の表現にも使います。以上・超・以下・未満の使い分けについて自信のない方は、下記で整理していますのでご参考ください。

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