リスニング力は一朝一夕で伸びるものではないため、勉強していても辛いですよね。
私が英語に真剣になったきっかけは、英語のリスニングテストで撃沈したからでした。
でもそこから本気で取り組んだ結果、気付いた時には聞き取りで困ることは無いレベルになっていました。
個人的な体感ですが、リスニングが大変なのは「聞けるようになる」という壁を突破するところまでだと思います。
その壁さえ越えてしまえばその後は簡単です。素地はできているため、英語でもドラマでも、あとはその語彙やスピードに慣らせばいいだけだからです。
だから、リスニング力を上げたい人には「聞ける」という壁を突破するところまで辛抱強く頑張ってほしいです。
今回は、私自身の経験を踏まえ、その壁を突破するまでにやってみて欲しい精聴のトレーニング法をお伝えします。
リスニングに困っているどなたかのお役に立てば嬉しいです。
想定レベル
リスニング力を上げたい!と言っても、人それぞれスタートラインが違いますよね。
本稿は以下のレベル感の方を念頭に置いています。
- 中学レベルのリスニング問題は聞き取れる
- 中学レベルの語彙・文法知識は問題ない
- 発音記号は理解している
- 高校2~3年レベルのリスニング問題になると苦労する
- ゆっくりスピードなら聞き取れるけど、少し早くなるとキツイ
- 単文や1~2往復のやりとりなら聞き取れるけど、長い会話文になるとキツイ
読んで分からないものは聞いても分かりません。リスニングは後回しにして、まずは基礎固め(語彙・文法)をしましょう。
「英文を音読したときに文章の内容が理解できる」レベルを目標に、「文の理解スピードを上げる」勉強をするのがおすすめです。
英単語をカタカナで認識しているうちはリスニングは出来るようになりません。まずは発音記号をマスターしましょう。
リスニングの勉強に使いたい教材
教材はズバリ、受験用や英語試験用のリスニング対策本(問題集)がおすすめです。
主な理由は以下です。
- アプリであれ書籍であれ、原稿(スクリプト)が確認できるから
- スピードと文章量(長さ)が適切に調整されているから
- レベル分けされており、自分のレベルに適したものを選びやすいから
他の教材(英語ニュース、Podcast、海外ドラマ、映画など)をおすすめしない理由は端的に言えば上記に反するからです。
冒頭でも述べましたが、最初の壁さえ越えればニュースだろうが映画だろうがその先はすぐ到達できます。
最初の壁を越えるには「学習用に設計された教材」を使うのが一番近道です。
適切なレベルの教材を使用すること
リスニングに限らずですが、教材選びで一番大事なのは適切なレベルのものを使用することです。
リスニングに関しては、易しめのものを選ぶのがポイントです。
- 易しめのもので確実に自信を付ける
- 物足りなくなったら次のレベルに進む
これを繰り返していくうちに上達します。
実力より背伸びし過ぎなものを選んでいた場合、一向に上達が実感できず挫折するリスクが高いので要注意です(私も失敗しました;ただただ自分の出来なさに落ち込むので本当に気を付けてください)。
逆に、「分かる」「できる」という実感に浸りたいがためにずっと①に居座ってしまうのもいけません。

物足りなくなったら次のレベルに移りましょうね。
リスニングの勉強で大事なこと = 精聴


問題集を使うのをおすすめしましたが、「一度解いて終わり」ではありません。
むしろ、一度解いた「あと」にどれだけその音声・スクリプトで勉強できるかが重要です。
飽きるほど聞き、口に出し、その音がちゃんと入ってくるようになるまで繰り返します。
一冊終えるころにばボロボロになっているはずです。
曖昧な箇所を完ぺきに潰すこと
リスニングの勉強で大事なのは多聴ではありません。精聴です。
ひとつの音声・スクリプトを何度も繰り返すことで、「何を言ってるか分からない」「何となくわかるけど自信はない」部分を徹底的に潰していき、一語一語何を言っているか分かるようにしていくことが大事です。
この段階では毎日新鮮な音源を聴いても無駄です。
能動的なリスニングのトレーニング方法
勉強法に関しては色んな方法がありますよね。音読、オーバーラッピング、シャドーイング、ディクテーションなど。
私のおすすめは以下です。
- オーバーラッピング
- 音読
- シャドーイング
オーバーラッピング
オーバーラッピングとは、「原稿(スクリプト)を見ながら音源と同時に音を出すこと」です。
スクリプトを見ながら聞くことで、何の単語を言っているのか理解しながら聞くことができます。
また、実際に口に出すことでスピードやリズムに体を慣らすことができます。自分で発声することのメリットは音読でも言われることですよね。
スクリプトを見ずに行う「シャドーイング」の方が有名ですが、いきなりそれは難しいです。また、文章理解が曖昧なままシャドーイングしても意味がありません。



それっぽい音は真似て出せますが、何の単語か分かっていなければ聞き取れていないのと同じなので意味がありません。
一度で聞き取れる部分が少ない場合や学習初期の段階では、シャドーイングを取り入れる必要はありません。オーバーラッピングの方がおすすめです。
オーバーラッピングを死ぬほどやることでリスニング力は確実に伸びます。事実、私はほとんどオーバーラッピングしかしていません。
何回やればいいのか?
大事なのは、1回や2回ではやったことにはならないことです。
数回やると満足してしまう人がいますが、次の問題に進んでいいのは「一語一語確実についていけている状態になったら」です。
上でも述べましたが、あいまいな部分を徹底的に潰すまで繰り返して初めてトレーニングになります。



聞けていても口が追い付かないことが多々あるはずです。
楽器をやったことがある人は分かると思いますが、一度や二度通し練習するだけで一曲弾けるようになる人なんていませんよね。スポーツでも、一度や二度やってみただけで新技がマスターできるなんてことありませんよね。
オーバーラッピングのトレーニングだけ一度や二度で終わらせていい訳ありません。
逆に言うと、一つのスクリプトに時間をかけていいんです。分量よりも精度を意識しましょう。
音読
オーバーラッピングをしていて「ちょっとスピードが速すぎるな」と思った時は、いったん音声は止めて音読に切り替えましょう。
文章理解が追い付いていないまま音だけ追っているだけでは意味がないからです。
少しスピードを落としてもいいです。まずは自分で音読し、確実に文章理解をしましょう。
自分の音読スピードで文章理解ができるようになったら、オーバーラッピングに戻ります。
音読のやり方に自信が無い方は下記をご参考ください。


シャドーイング
「スクリプトを見ずに、聞こえてきた音に続いて(ほんの少しだけ遅れて)発声する」のがシャドーイングです。
シャドーイングは聞こえた単語を発声していくトレーニングです。
何の単語か分からないままそれっぽい音を真似ているだけでは意味がありません。単語として認識できていないということだからです。
何の単語を発しているか分からない場合は、音声を止めてスクリプトで確認しましょう。
シャドーイングは視覚(スクリプト)に頼れない分、オーバーラッピングより難易度が高いです。
ある程度聞き取りが出来るようになってきたらいきなりシャドーイングでもいいですが、ハードルが高いようであれば無理してやる必要はありません。
それよりオーバーラッピングを30回やる方が断然価値があると思います。
おすすめしない勉強法


上に紹介した方法以外にもリスニング勉強法はたくさんありますが、「聞き流し」と「ディクテーション」はおすすめしません。
聞き流し
上で述べた通り、この段階で大事なのは精聴です。「聞き流し」は全く勉強になりませんので止めましょう。
ディクテーション
ディクテーションは聞こえた音声を書き取るトレーニングです。
効果はあると思います。ただ、面倒くさいです(笑)。
書くのって絶対に遅いですし、一文一文音声を止めるなんて億劫すぎませんか?(私には無理です)
聞き取れているけど、ただスペルを知らなくて書けない場合もあると思います。リスニングの最中に単語学習だなんて非効率です。
好きな方はもちろんご自由にどうぞですし、有効性を否定するつもりはありません。
ただ、ディクテーションをしなくてもリスニング力は上がります。私はディクテーションは全くしていませんが、聞き取りに不自由ないリスニング力は身に付きました。
やってみて「めんどくさ」と思った方は潔く捨てましょう。オーバーラッピングとシャドーイングで十分ですよ。
更にレベルアップしたい人におすすめな教材


時間もかかりますし大変ですが、上で紹介した方法で問題集を数冊終えればかなり耳は鍛えられているはずです。
「もう問題集はやりきってしまった!」「これより上のレベルの問題集は無い!」という方は、
- 聴く量を増やしていく
- 音声(シチュエーション、アクセント、スピード)のバリエーションを増やしていく
のがいいと思います。
とはいえ、「聞き流し」は無意味なのでニュースやドラマの垂れ流しはおすすめできません。やはりスクリプトは必須です。
英語学習雑誌
上記の要望を満たすのにおすすめなのが雑誌です。新鮮な素材で勉強できるため飽きませんし、当然スクリプト完備です。
今の時代、無料でスクリプトと音声を手に入れる方法(アプリ、ウェブ)はたくさんあります。
でも、選択肢が多いと選ぶのが大変ですし、能動的に入手しに行かないといけないため自己統制力が必要です。(私には無いので無理です)
雑誌であれば、適当な素材を適当な分量だけ切り取ってくれています。そこから気になったものだけやればいいだけなので楽ですよ。
具体的には、『CNN ENGLISH EXPRESS』と『ENGLISH JOURNAL』の2誌を使っていました(同時期ではありません)。
内容が全然異なるので好みは分かれると思いますが、合いそうであれば是非一度試してみてください。
CNN ENGLISH EXPRESS
ニュースで勉強したい人にピッタリなのが超王道の語学雑誌『CNN ENGLISH EXPRESS』です。
- 旬のトピックが題材のため時事も学べて一石二鳥
- 短いニュースからインタビュー記事まであり、レベル(興味)に合わせて素材を選びやすい
- 語彙注釈や日本語訳が付いているため、調べものに時間を無駄にしなくても済む
- 実際のニュースで学ぶため、ナチュラルスピードやアクセントにも慣れる
- 英語ニュースを生活に取り入れたい人の準備練習としても最適
自分で音声付きのニュースサイトなどから記事を探そうとすると面倒ですし、日本語注釈はないですし、どうしても偏ったトピック(興味のあるもの)を選びがちです。
そういった点で、予め適当な内容・分量をセレクトしてくれている本誌は本当に有り難かったです。
世界で話題になっているトピックに関心が無く、エンタメとして英語を学びたい人には不適ですが、上記にメリットを感じる人にはおすすめですよ。
ENGLISH JOURNAL
「ニュースはどうでもいい」「英語が好き」「英語圏が好き」「色んな英語を知りたい&学びたい」という英語が趣味の方におすすめなのがアルクの英語情報誌『ENGLISH JOURNAL』です。
- 海外の有名人・話題の人のインタビュー記事で学べる(英語云々より内容自体が興味深い)
- 国を問わず色んな人の「生の英語」が聞けるため、ナチュラルスピードやアクセントにも慣れる
- インタビュー、英語学習用コラム、ニュースなど、内容がバラエティに富んでいて飽きない
- 興味のある題材・素材だけ摘まんで勉強するとしても十分な情報量がある
勉強というより生涯学習とか趣味的に英語を楽しんでいる人にはとても楽しいと思います。
逆に、「そういう英語好きじゃないんだよな」という方には不向きかもしれません。また、コンテンツが充実し過ぎているため、全部のコンテンツをやりきらないと消化不良に感じてしまう方には向かないかもしれません。
「生の英語」で鍛えたい人におすすめ
ENGLISH JOURNALはアルクの『1000時間ヒアリングマラソン』の副教材になっていたので、私は1年間みっちりこれで多聴をしました。
その結果、ナチュラルスピードとアクセントに慣れ、字幕なしでも映画が見れるレベルまで耳が鍛えられましたので、「生の英語で徹底的に鍛えたい!」という方にはとてもおすすめです。
おすすめはインタビュー記事
コンテンツはバラエティに富んでいますが、私の一押しはインタビュー記事です。
すごくクセの強い話し方をする人や恐ろしく早口な人もいてオーバーラッピングするのはとても大変でしたが、有名人・著名人のインタビューは内容的にも興味深く楽しかったです。
しかも、そうやって色んな人の英語を聞いているうちにスピードやアクセントが気にならなくなっていました。
アクセントが違うともう別言語!みたいな感覚で聞き取れなくて悩んでいる方もいると思いますが、そんな方の苦手克服にもおすすめです。



イギリス・オーストラリアなどの英語圏内のアクセントだけでなく、アラブ系やアジア人など、ノンネイティブの英語にも慣れてきますよ。
おわりに
リスニングの上達には時間がかかりますが、愚直に精聴のトレーニングをすれば確実に壁は越えられます。
楽な方法はありませんが、教材の選び方やトレーニングの仕方次第で学習効率は変わるはずです。
精聴の重要さは皆さんご存じで、既にやっている方がほとんどだと思います。ただ、その「繰り返しの数」が、もしかしたらみなさんの想定よりももっとずっとたくさん必要なのかもしれません。
今回紹介した方法はもちろん私個人の経験に基づくもので、これが万人にとってベストな方法ではないと思います。
でも、少なくともこの方法で私は「留学初日から聞き取りで苦労することはないレベルのリスニング力」を付けることが出来ましたので、一定の成果は得られると思います。