英作文のコツは、与えられた日本語や頭の中でイメージした和文を「英語にしやすい文章」に変換することです。
同じ内容でも伝え方はたくさんあります。主語を変えれば簡単に書けたり、構文を変えれば書き易くなったりするのです。
元文に縛られること無く、「結局何が伝えたいのか?」を考えるのがポイントです。
英作文が苦にならない人、英訳が得意な人というのは、こういう思考の転換がちょっとだけ得意なんだと思います。ただの思考のコツなので、特殊な能力や才能がある訳ではありません。
英作文が苦手な人、書きたいことが書けずにいつも悩んでしまう人は、是非この「日本語の言い換え」を練習してみましょう。何度か繰り返すうちに慣れてきますよ。
今回は、英作文が楽になる「日本語の言い換えのコツ」と、英訳力を鍛えるための勉強法をご紹介します。
英作文が難しくなる原因
英作文で苦しくなる原因は、「日本語の文章を最初に固めてしまうから」です。
日本語だと言いたいことを何でも表現できてしまうため、ついつい複雑な文章や難しい単語を使ったカッコいい文章を作ってしまいがちです。
でも、それをそのまま英訳するだけの語彙や表現力が英語にはない場合は多いですよね。だから困ってしまうんです。
設定した「和文」と「英語力」との間に乖離があると、「言いたいことが表現できない!」という状況に陥ってしまいます。これが、自由英作文が難しいと感じてしまう要因です。
英作文のポイント:英語にしやすい「和文」に言い換える
「言いたいコト」はひとつでも、その表現の方法はたくさんあるはずです。
「言いたいコト」を、カッコいいベストな表現じゃなくてもいいから、「英語にしやすい和文に言い換える」のが英作文のポイントです。
誰でも最初に言いたいことを日本語で思い浮かべると思います。でも、その最初に思い浮かべた「和文」にこだわる必要は全くありません。
その文章をそのまま英訳することが難しそうであれば、どうやって英語にするかを頑張って考えるのではなく、「和文」の方を別のものに変えてあげましょう。
最初に思いついた理想的な内容とは違うかもしれないし、情報量は少なくなってしまうかもしれません。
でも、伝えたい内容が少しでもたくさん伝われば OK です。気軽に行きましょう。手持ちの語彙と文法で表現できることは絶対にあります。
大切なのは、最初から表現したい「和文」を固定してしまわないことです。
この考え方は、自由英作文はもちろんですが、和文英訳でも大事ですよ。
言い換えのポイント:言いたいコトを様々な角度から見てみる
同じ事象でも表現の仕方は無限にあります。「伝えたいことは何なのか」という概念に注目し、それを色んな角度から見て説明しようとしてみてください。
例えば、二都市の比較をするというエッセイの中で、次の内容を言いたい!という場合を考えてみましょう。
東京の人口は千葉の約2倍である
これの直訳的な表現は下のような文章になりますが、これがパッと思い浮かばない場合はどうしますか?
- The population of Tokyo is about twice as large as that of Chiba.
- The population of Tokyo is about twice larger than that of Chiba.
こういう時こそ、「和文の言い換え」です。
上の「伝えたいこと」を表現する方法は他にもたくさんあります。この日本語の英訳を頑張るのではなく、この日本語自体を変換しましょう。

やってみましょう
例えば、「東京の方が千葉より人口が多い」でも言いたいことはかなり伝えられますよね。
他にも、例えば概算でも人口の知識があるなら、ダイレクトに人口を数値で示すことも可能ですよね。(寧ろ「伝えたいこと」より情報量が増えていますし、これが出来たらカッコいいですね)
東京の人口は約1350万人。千葉の人口は約620万人。
Tokyo has a population of about 13.5 million; Chiba has about 6.2 million.
他にも、主語や述語を変えることで色々な表現が出来そうです。
- 東京は千葉の約二倍の人口を有している
- 東京の人口は千葉の人口より多い
- 東京には千葉よりたくさん人が住んでいる
- 東京は千葉より人が多い
- 千葉の人口は東京の人口の約半分
- 千葉の人口は東京の人口より少ない
- 千葉に住んでいる人は東京より少ない
- 千葉は東京より人が少ない
もちろん、「2倍多い/少ない」と「より多い/少ない」では情報量が異なるため、同義ではありません。
でも、そんなの全然クリティカルな問題ではありません。どちらも事実を表現できているから正解なんです。



大事なのは、「倍数表現分からないから…」と諦めてしまわないことです。正解はひとつではありません。堂々と違う表現をしましょう。
こうやって「伝えたいこと」の概念を色んな言い方で表現してみると、その中には英語でも言えそうだなと思うものがあるはずです。
- Tokyo has twice as large a population as Chiba.
- Tokyo has a larger population than Chiba.
- Tokyo has more people than Chiba.
- More people live in Tokyo than in Chiba.
- There are more people living in Tokyo than in Chiba.
- The population of Chiba is about half the population of Tokyo.
- Chiba has about half the population of Tokyo.
- Chiba has a smaller population than Tokyo.
- Chiba has fewer people than Tokyo.
- Fewer people live in Chiba than in Tokyo.
- There are fewer people living in Chiba than in Tokyo.
「伝えたいこと」を色んな日本語で表現してみる。英語化できそうな表現が見つかったら、それを英語にする。
実際に学生さんたちの答案を見ていると、同じ事象を描写しているはずなのにみんな本当に様々な表現をしています。
一人で考えていると「これしかない!」と思ってしまいがちですが、そんなことは絶対にありません。是非、色んな角度から物事を表現する練習をしてみましょう。
小学生の子に何かを説明しようとするとき、普段使うより平易な言葉を使ったり、難しいところは敢えて端折って簡単に説明したりと工夫しますよね?あの感覚も大いに使えますよ。
言い換えの方法
異なる表現の仕方を考えるときには、次の3点のどれかを変えてみるのが簡単です。
- 主語
- 述語・動詞
- 情報量
主語を変える
視点を変える一番簡単な方法は、「主語」を変えることです。
誰(何)を主語にすると書きやすいかを考えてみましょう
- 東京?
- 東京の人口?
- 東京に住んでる人?
- 千葉? etc…
人口を説明する今回の例文では「都市」や「地域」を主語にするイメージが強いかもしれませんが、もちろん「人」を主語にしても表現できますよね。
逆に、出来事や現象を説明する文脈ではそれを経験した「人」を主語にするイメージが強く、なかなか他のものを主語にする発想が湧かないかもしれません。
もちろん「人」が主語でも英語に出来れば何の問題もないのですが、「無生物」を主語にした方がずっと簡単に作文できるケースもたくさんあります。
無生物主語の文作りに慣れると英作はかなり楽になりますので、文のバリエーションが少ない方や無生物主語に苦手意識のある方は「無生物主語の文章の作り方:ポイントは作用主・被作用主のイメージ」もご覧になってみてください。
述語・動詞を変える
主語を決めると述語・動詞は自ずと決まることが多いですが、述語・動詞から考えるパターンもあります。
情報量を下げる
情報量を下げること(もしくは要約すること)も有用な方法です。
「2倍」の書き方は分からないけど「多い」なら分かる!
⇒「○○の人口は多い」にする
このように、具体のレベルを下げると表現できる可能性が高くなります。
レポートや論文ではデータを示すことが大事なので情報量を落とすことは望ましくありません。
でも、自由英作文では多少情報量が落ちたとしても言いたいことが伝えられていたら十分です。まずは概念を伝えることを目標にしましょう。
言い換えの練習
「和文」を変えるイメージはつかめたでしょうか?
せっかくなので、別の例題を使っておさらいしてみましょう。
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英訳力を鍛えるための練習法
最後に、とにかく英語にする英訳力を付けたい人におすすめのトレーニングをお伝えします。
ここでいう「英訳」は、翻訳という意味ではありません。「言いたいコトを英語で表現する力」のことです。そのため、上でお伝えした「和文和訳」ももちろん前提としています。
ニュース記事の英訳・翻訳
私は『Yahoo! ニュース』の中から興味のあるものを選んで「英訳」または「要約」していたことがありますが、これはかなり身になるのでおすすめです。大変ではありますが、メリットもたくさんあります。
- 時事ネタが学べるため一石二鳥(入試・英検・就職などあらゆる試験に役立つ)
- 英語日記などと違い、書くべき日本語があるため「何を書こうか」に悩まなくていい(時間が無駄にならない)
- そのまま素直に翻訳できる訳がないから「和文和訳」が必須で、良い練習になる
- 連日似たような題材について書いていれば、単語も覚えやすい
※もちろん、素材は Yahoo! ニュースじゃなくても他のニュース記事でも大丈夫です。
ただし、いくつか注意点があります。
- 頑張り過ぎないこと
-
記事全部を訳す必要はありません。気になったところ2~3文でも十分です。当然、毎日やる必要もありません。ご自身の熱量と目的に合わせて、適切な分量・頻度を設定することが大事です。
初めは「英訳」から始めて、慣れてきたら「要約」にもチャレンジしてみてください。すごくいい訓練になりますよ。
- 逐語訳しないこと
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翻訳の勉強が目的ではないため、逐語訳をする必要はありません。あくまで「英語化」の訓練であり、概念を英語で表現することが目的です。「いかに自分の知っている文法・単語で表現するか」の練習だと考えるといいと思います。
- 知らないことは躊躇せず調べる
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自分の知っている単語で表現しようと努力することは大事です。でも、知らない単語は考えても仕方ないので、さっさと調べて「覚える」のも賢い手です。ただ、「考える時間」も確かに大事で、考え切った後に参考書を見ると定着率は高いです。
この辺りは目的やレベルにもよりますので、みなさんの目的に応じて是非ルールを作ってみてください。
『Yahoo! ニュース』には、どうでもいい芸能トピックから堅い経済ニュース、いかにも試験に出そうな国内・国際時事問題まで色々あり選びやすいと思います。
でも、題材を探す場所はほかにも無限にあります。
トピック探しに時間をかけるのは勿体ないので要注意ですが、「この分野の語彙を増やしたい」「この分野なら好きだから続けられそう」などの興味・志向があれば、是非そういうものを使ってください。自分で選んだものが一番です。
自分の英訳のチェックの際には、翻訳機の結果と見比べてみるのも手軽でおすすめですよ。


自分の英訳の正誤は、辞書と文法書を見ながら自分で確認するのが一番勉強になります。
ただ、どうしても疑問が残る時や実力試しとして、たまに添削を受けるのも有用だと思います。
周りに添削を頼める人がいない場合は、有料ですがオンラインのサービスもありますよ。
もちろん、都度払いで単発利用が可能です↓
まとめ
英作文のコツは、最初に表現したい日本語を固めてしまわず、「言いたいコトを英語にしやすい和文に言い換える」ことです。
ひとつの事柄でも表現の仕方は無限にあり、その中には自分の手持ちの語彙・文法で表現できることが絶対にあるはずです。その「英語にしやすい和文」を見つけることが大事です。
和文を言い換える時は、①主語、②述語・動詞、③情報量 のどれかを変えてみてください。これなら英語で言えそうだなという文章を探しましょう。
最初は「和文和訳」に時間がかかるかもしれませんが、ただの思考のコツなので、そのうち慣れて自然にできるようになります。そうなれば英訳はずっと楽になりますし、書けるという実感が湧くことでどんどん楽しくなっていきますよ。
是非、面倒臭がらずに色んな和文の言い換えをしてみてください。

