投稿規定で確認すべきポイント|医学研究論文

投稿論文が完成したら、投稿先のジャーナルの投稿規定に従ってフォーマット調整する必要がありますね。

ところが、和文誌と違って英文誌の投稿規定は細かくて長い…。

慣れれば見るべき箇所は分かってくるものですが、初めは情報量に圧倒されてしまう方もいらっしゃると思います。今回は、そんな英語論文の投稿が初めての方向けに、投稿規定で記載されている内容と確認すべきポイントを整理したいと思います。

  • 医学系のジャーナルを対象としています。他分野には当てはまらない内容もあると思いますのでご注意ください。
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投稿規定

投稿規定とは

ジャーナルに論文を投稿するには、「投稿規定」を満たさなければいけません。当該ジャーナルが受け付けしている論文のタイプや、論文の書式、投稿の際に提出しなければいけない情報などのルールを定めたものです。

規定から少し外れているからといって即却下ということはまずありません。通常は編集部がチェックしてくれて、規定を満たしていない箇所があれば直すよう教えてくれます。ただ、その間その投稿はいったん差し戻しとなり投稿日が遅くなります。また、編集部に手間をかけさせることに変わりはありません。

完璧じゃなきゃダメだと恐れる必要は全くありませんが、スムーズに処理してもらえるよう、要所はしっかり押さえて準備しましょう。

掲載場所

各ジャーナルのウェブサイト上に掲載されています。著者向け(投稿したい人向け)のページにありますので、以下のような表現を目印に探してみてください。

  • Guide for authors
  • Submission guidelines
  • Information for author
  • Instructions for author

全般的な確認事項

Scope

ジャーナルのスコープは雑誌を選定する際に確認すべきことですが、当初の想定から論文の内容が変わっていることもあると思います。スコープに合っているかどうか今一度確認してから規程確認の作業を続けましょう。

確認すべきこと
  • 論文の内容が当該雑誌の興味対象の範疇かどうか
  • 論文のタイプ(original article, review, case report, etc…)は、当該雑誌の受付対象かどうか

スコープに合致していない場合は雑誌変更が必要です。この先は作業しても無駄になりますのでご注意ください。

Article Type

受付している論文のタイプごとに、字数や図表数の制限など基本的な条件が記載されていることがあります。条件を満たしているか確認し、もし超過している場合は修正しましょう。

SAMPLE

Original Article

  • Word limit: Up to 5000 words (excluding references)
  • Number of figures/tables: A total of up to 5 figures/tables
  • Number of references: Up to 40 references
  • 箇条書きで書かれている場合や文章で書かれている場合など形式は様々です。見落とさないようチェックしましょう。
  • 論文のタイプ(original article, review article, care report, etc…)ごとに条件が異なります。該当するタイプの条件をチェックしましょう。

フォーマット

Article Structure

セクションの分け方・順番が指示されています。指示通りに heading を付け、フォーマットを調整しましょう。Heading の階層数に制限がある場合や、セクションをナンバリング(1.1、1.2、2.1、etc…)するよう指示がある場合もあります。

SAMPLE

The manuscript file should include the (1) title page; (2) abstract and keywords; (3) text, which comprises introduction, methods, results, and discussions; (4) acknowledgements and declarations; (5) references; (6) tables; and (7) figure captions (figure files should be uploaded as separate files).

Each section should start with an appropriate heading. Use the decimal system of headings with no more than three levels.

書式設定

以下のような全体的な書式設定について指示がある場合があります。稀にテンプレートが用意されているジャーナルもあります。

  • ダブルスペース
  • 余白
  • フォント
  • ページ番号
  • 行番号
  • 改ページの禁止

Title Page

タイトルページに記載すべき情報が指示されています。漏れのないよう揃えましょう。

タイトルページに入れる情報
  • タイトル
  • 著者と所属
  • Corresponding authorの連絡先
  • Running title/Short title(※)
  • 謝辞・Funding・利益相反・Author Contributionsなど(※)
  • キーワード(※)
  • 雑誌によって必要な場合があります。タイトルページではなく別の場所に記載する場合もあります。

タイトルの capitalization については神経質になる必要は無いと思いますが、細かいところが気になる方は、掲載済み論文のタイトル表記を確認してみてください。Sentence case か Title case かどちらで書くべきか分かります。(Capitalization のルールについては以下をご覧ください。)

Abstract

抄録(abstract)の字数や構成にも規定があります。この情報は Abstract 作成時に確認済みのはずですが、規定通りに作成できているか今一度確認しましょう。キーワードについてもここで指示されている場合が多いです。

SAMPLE

Each manuscript must include an abstract of up to 250 words. An abstract must be structured with the following headings: objectives, methods, results, and conclusion. Under the abstract, please list six keywords.

“unstructured abstract” と書かれている場合は、項立て(セクション分け)不要です。1パラグラフで作成すればOKです。

Tables

表について、以下のようなルールが記載されているはずです。条件に沿うよう、書式調整しましょう。

  • 配置場所(例:原稿末尾)
  • 提出方法(例:原稿とは別ファイル)
  • タイトルの文字数制限
  • 注釈で用いる記号
    • p値にはアスタリスク(*)を用いる
    • アルファベットの小文字あるいは記号(*, †, ‡, §, etc…)の上付き
  • その他条件(例:一つのマスに2つ以上のデータを入れない)

Figures

図・写真についても細かくルールが記載されています。条件通りにファイルを準備しましょう。

  • ファイル形式・サイズ
  • 図内に使用するフォント
  • カラー図にする場合の注意事項
  • 文中での表記法(例:Fig 1、Fig. 1、Figure 1)
  • タイトル・脚注に関する注意事項

Supplementary Materials

補足資料・追加資料(supplementary file, supporting informationなど)に関しても規定があります。以下のようなルールが記載されている可能性がありますので、確認しながら準備しましょう。

  • 提出可能なファイル形式
  • ファイル名の付け方
  • キャプションなど、その他提出が必要な情報について

References

文中引用と引用文献リストの表記について指示があります。

文中引用の例
  • 角括弧&数字:[1], [2–5], [2, 3, 7]
  • 上付き数字:xxx1, xxx2–5, xxx2,3,7
  • 著者&発行年:(Johnson, 2018), (Ito & Adachi, 2000), (Phillips et al., 2015)

引用文献リストの書き方については、「Vancouver スタイル」などのスタイル名が書いてある場合もありますが、サンプルが載っている場合がほとんどです。スタイルのルールに詳しくなくても、サンプル通りに記載すればよいので特に調べる必要はないと思います。

カバーレター

論文を提出する際にはカバーレターを添えます。論文の内容と意義・インパクトなどを伝えるのが主な目的ですが、カバーレターに含めるべき項目を定めているケースがたまにあります(例:推薦する査読者の情報、著者の役割・貢献、利益相反など)。

フォーマットに指定が無い場合の方が多いとは思いますが、カバーレターの不備のせいで失敗したくはありませんので、念のため諸条件の有無を確認した上で準備しましょう。カバーレターの作り方は 投稿論文に添えるカバーレターの書き方 で説明していますので良ければご覧ください(サンプルも載せています)。

倫理的配慮について

医学系ジャーナルの投稿規定には、倫理的配慮に関するジャーナルポリシーの説明が非常に多いですが、内容としてはだいたい共通しています。基本的には研究計画の段階から倫理面には配慮して実施されていると思いますので、ポリシー自体に違反してしまっていることはまず無いと思います。

ただ、こうした倫理的配慮に関しては「論文で明記しなければならない情報」があります。「何を」「どの場所に」記載しなければいけないのかという観点で、投稿規定をよく確認してください。

確認すべきこと
  • Trial Registration についてはどこに記載すべきか(該当する場合)
  • 各種法令順守について、何をどこに記載すべきか(該当する場合)
  • 倫理審査および同意取得について、何をどこに記載すべきか(該当する場合)
  • 承認・同意を受けていない場合はどのような記載をすればよいか(該当する場合)

Declarations

Conflicts of Interest/Competing Interest

著者の利益相反について、開示すべき情報と開示方法が規定されています。論文の末尾にテキストで記載する場合や、ジャーナルが別途用意している専用の書式に記入して提出する場合、その両方が必要な場合など様々なパターンがあります。テキストで記載する場合のサンプル文例は COI statement(利益相反)の書き方 にありますので参考にしてください。

専用の書式で提出する場合には著者自身による署名が必要な場合もあります。書類に不備があると投稿を受け付けてもらえず差し戻し(pending)になってしまいます。不備の無いよう、予め必要事項をよく確認した上で準備しましょう。

Author Contribution

透明性の観点から、各著者が担った役割・貢献(author contribution)を明記することを求めるジャーナルが増えています。必須の場合は、指定された場所に Author Contribution を記載してください。書き方(サンプル)は Author Contribution(著者の貢献)の書き方 で紹介しています。

ジャーナルによっては「著者条件」を投稿規定内で定義している場合があります。著者の定義が自分の認識とは異なる可能性がありますので注意してください。

Funding

資金提供については必ず記載します。ただし、査読プロセスが「single blind」か「double blind」かによって、記載すべき場所が違ったりします(例:論文末尾またはタイトルページ)。どこに記載するよう指示されているか確認しましょう。

Data Availability Statement

透明性の観点から、研究で分析したデータセットを共有・公開することを推奨するジャーナルが増えています。「推奨」レベルのものが多く義務化しているものはまだ少ないですが、data availability について明記しなければならないケースは増えています。

データを「公開しない」からといって論文が却下されたり採否に影響することはありませんので安心してください。規定のサンプル文例を参考に説明文を作れば大丈夫です。文例(テンプレート)は Data availability statement の書き方 で紹介していますので、良ければご参考ください。

おわりに

英文ジャーナルの投稿規定の情報量は多いですが、確認すべき内容はクリアになったでしょうか?

当該研究・論文には関係ないセクションは読む必要はありませんし、2~3誌経験すれば要領は分かって来ますので、戸惑うのは最初だけだと思います。是非、本稿を参考にポイントを押さえて規定チェックして頂ければ幸いです。

これから投稿であればまだまだ先ですが、査読審査後の再提出の際は期限延長も必要に応じてご検討ください。詳細は以下の記事で説明しています。

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