論文や記事のタイトルでは、先頭の単語以外の単語も大文字で始める title case を使うことがありますよね。
何となく「冠詞と前置詞以外は大文字で始めとけばいいのかな・・・」というイメージはあるのですが、これまでしっかり調べたことがありませんでした。(最終的にはエディターが直してくれるし…と思って、あまり気にしてませんでした。^^;)
ただ、
- コロンの後にサブタイトルを置くときの出だし
- ハイフンで繋いだ複合語の後ろの要素
で、大文字にすべきか小文字にすべきか、いつも地味に迷うんですよね。笑

「前の英文校正ではこうだったから」と思って capitalize したのに、別の校正者には違ったことを言われる・・・
—なんてことはしょっちゅうなので、考えないようにしていました。笑
そこで今回は、論文などのタイトルの capitalization ルールをまとめました。同じようなお悩みのある方の疑問解消に繋がれば嬉しいです。
この記事は「タイトルケース」のルールをまとめています。
通常の文章の句読点として使う場合、コロンの後ろは「小文字」です。コロンの使い方は下記でまとめていますので、通常の文章でのコロンのルールを知りたい方はこちらをご覧くださいね。
タイトルの表記ルールの種類
まず、タイトル表記には冒頭で紹介したような「title case」と、普通の文章のように、先頭の単語のみ大文字で始める「sentence case」があります。
Title case
下の例のように、途中の単語も capitalization するのが title case です。
- The Impacts of Psychological Distress on Sleep Quality
- Development of a Novel Tool for Measuring Productivity
ややこしいのは、この title case のルールはスタイル(AP style, Chicago style, AMA, etc…)によって微妙に異なるという点です。
とはいえ大枠は共通しており、基本的には以下の理解で通用します。
- 最初と最後※1の単語は capitalize する(他のルールより優先)
- Principal な単語(名詞・代名詞、動詞・助動詞・句動詞、形容詞、副詞)は capitalize する
- 冠詞は capitalize しない
- 短い等位接続詞(and, but, or, for, nor など)は capitalize しない
- 短い前置詞は capitalize しない
- 不定詞の to は capitalize しない※3
※1 AMA では最後の単語の capitalize は不要
※2 AP style では capitalize する
上述した通り、細かなルールはスタイルによって異なります。
実用においてはライター自身がそこまで厳密に注意する必要はないと思いますが、主要な点については本記事の末尾でも簡単にまとめていますので、気になる方はご覧ください。
Sentence case
一方、普通の文章のように一番最初の単語のみ大文字で始め、残りは全て(固有名詞以外)小文字で記載するのが「sentence case」です。
- The impacts of psychological distress on sleep quality
- Development of a novel tool for measuring productivity
Sentence case の場合は楽そうですね。
コロンに続く単語の capitalization
「コロンの後ろに書く単語を大文字にすべきか小文字にすべきか」です。



今回のメインテーマですね
結論ですが、title case か sentence case かでルールは異なります。まずはどちらの表記なのかを確認してください。
Title case の場合
Title case の場合、コロンの後ろに続く最初の単語は大文字で始めます。
- Mental Disorders in Young Adults: A Nationwide Survey from 2015 to 2020
- Sleep Impairment: What You Don’t Know Can Hurt You
- Active Users of Social Media: Motivations and Behaviors
Title case では基本ルールとして冠詞は小文字で表記しますが、コロンの後ろでサブタイトルになっている場合は、例①のように冠詞でも capitalize します。
Sentence case の場合
Sentence case の場合は、コロンの後ろが「サブタイトルかどうか」で考え方が異なるようです。
- Mental disorders in young adults: A nationwide survey from 2015 to 2020
- Sleep impairment: What you don’t know can hurt you
- Active users of social media: motivations and behaviors
サブタイトルの場合
コロンの後ろが「サブタイトル」の場合は大文字で始めます(例①)。
- Mental disorders in young adults: A nationwide survey from 2015 to 2020
文中と同じコロンの用法の場合
サブタイトルではなく通常のコロンの使用(コロンの前の内容の説明やリストの提示)と考えられる場合は、コロンの後ろが独立した節(independent clause)の場合は大文字にします(例②)。
- Sleep impairment: What you don’t know can hurt you
一方、コロンの後ろが節ではない場合は小文字のままとします(例③)。
- Active users of social media: motivations and behaviors
独立節か句かで区別できるのかなと思ったのですが、そうではありませんでした(泣。
サブタイトルと考える場合はコロンの後ろが句でも capitalize していいようです。(サブタイトルか否かの判断が難しいような・・・。)


ハイフンで繋いだ単語の capitalization(注:title case の場合)
Sentence case の場合は最初の単語(と固有名詞)以外は capitalize する必要がありませんので、ハイフン付き単語の capitalization に悩むことはありません。



問題は title case の場合のみです。
Hyphenated words の capitalization ルールもスタイルによって異なりましたが、基本的には以下の理解で良いと思います。
- Hyphenated word の一つ目の要素は capitalize する
- ハイフンの後ろの要素が主要な単語の場合は capitalize する
- ハイフンの後ろの要素が冠詞・前置詞・等位接続詞(and, but, for, or, norなど) の場合は capitalize しない
- 数字のスペルアウトの場合は、ハイフンの後ろの要素も capitalize する(例:Thirty-Five)
- 一つ目の要素が接頭語などそれ単体で単語として成立しない場合、後ろの要素は capitalize しない(例:Anti-tumor)
各スタイルの厳密なルールについては、下のスタイル別のまとめをご参照ください。
【補足】title case の スタイル別 capitalization ルール
正直、実務レベルでは上で紹介した基本ルールに則していれば問題ないとは思います。厳密なルールは出版社・雑誌・媒体によって異なる可能性もあるからです(そこのエディターしか知り得ない)。
以下ではご参考程度にスタイル別の主要なルールをまとめておきます。



Capitalization のルールについては色んな人が色んなことを言ってくる可能性がありますが、「スタイル毎に違う」ということを知っておけば、混乱したり喧嘩になったりすることは無いでしょう(「絶対正しい」人はいないはずです。笑)。
The Associated Press (AP) Style
- 4文字以上の単語は、接続詞・前置詞も含め全て capitalize する
- 3文字以下の接続詞(and, or, nor, but など)は小文字
- 3文字以下の前置詞(at, by, for, in, of, on, per, to など)は小文字
- 不定詞の to は capitalize する
The Chicago Manual of Style
- 前置詞は長さに関係なく全て小文字(between, among, throughout などの長いものも全て)
- 句動詞の一部で使われている要素は capitalize する(例:Look Up)
- 接続詞
- 等位接続詞(and, but, for, or, nor など)は小文字
- 従属接続詞(asを除く)は capitalize する
- ハイフンで繋いだ複合語
- 後ろの要素は、冠詞・前置詞・等位接続詞でなければ capitalize する
- 前の要素が接頭語など単体で成立しない言葉の場合は、後ろの要素は capitalize しない
MLA Style (MLA, Modern Language Association)
- 前置詞は長さに関係なく全て小文字
- 一語ではなく複合語の場合も全て小文字(例:according to/as regards/concerning/except for/other than)
- 接続詞
- 等位接続詞は小文字
- 従属接続詞(after, although, as if, as soon as, because, before, if, that, unless, until, when, where, while)は capitalize する
- ハイフンで繋いだ複合語
- 後ろの要素が主要な単語の場合は capitalize する
- ハイフンなしで辞書に載っている単語の場合は capitalizeしない(例:“Anti-tumor”)
The AMA Manual of Style (AMA, American Medical Association)
- 最後の単語の capitalize は不要(※他のスタイルでは、タイトルの最後の単語は capitalize する)
- 3文字以下の等位接続詞と前置詞は小文字
- ハイフンで繋いだ複合語
- 要素のどちらかが接頭語・接尾語の場合は capitalize しない(例:“Anti-inflammatory,” “System-wide”)
- 両方でひとつの単語を形成する場合は capitalize しない(例:“Short-term”)
- どちらの要素も重みが同じときは、後ろの要素もcapitalizeする (例:“Cost-Benefit”)
タイトル変換ツール
指定したスタイルのルールに則してタイトル表記を capitalization してくれるサイトもあります。
色々考えなくても、こういうのを使えば楽ですね。笑
Title Case Converter:https://titlecaseconverter.com/



あとはもうエディターの判断に任せましょう。独自のルールもあるでしょうから。
おわりに
今回はタイトルの capitalization ルールを調べてみました。
完全に自己満ですが、今まで気になってはいたものの詳しく調べたことがなかったため、「絶対的なルールはない」ということが分かっただけでもかなりスッキリしました。
厳密なところまでは理解する必要は無いと思いますが、どのスタイルでも共通する基本ルールくらいは押さえておきたいですよね。細かいところは上で紹介したような変換ツールにお任せしちゃいましょう。
絶対的なルールをお伝え出来たわけではないため消化不良感は否めず申し訳ないですが、少しでも皆さんの疑問解消になれば嬉しいです。