理由の一文で気を付けたいこと|何のメリット?何との比較?何の結果?

自由英作文の添削で、「言葉が足りない」「情報不足」などと指摘されることはありませんか?

原因としては「論理の飛躍」や「背景・前提情報の説明不足」が多いと思います。

全体の論理展開や構成力はすぐに直すのは難しいかもしれませんが、単文レベルで改善できることもあります

私が実際に添削していてよく感じるのは、「理由の一文に必要な情報が欠けている」ということです。

自分の頭の中では何のメリットや何の特徴を語っているのか明確なため省略してしまう人が多いのですが、書いてくれないと読み手は分かりません。

自分の中では「前提」で当たり前と思える情報でも、読み手にとってはそうではないことは多いです。実際、私も日々みなさんの多様な考えや発想に驚かされています。

理由の一文はそういう「赤の他人」を説得させるための一発目の文章です。不明瞭な点や誤解がないよう、必要な情報はしっかり明記して説明することが大事です。

本稿では、理由の一文でよく見る言葉足らずの文章と、「こうしたら具体的になるよ」という変更例を提示しています。

「言葉足らず」「説明不足」という指摘が多い方は、ぜひ参考にしてみてください。

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理由の一文に入れたい情報

まず、理由の一文目には何を書くべきかをおさらいしておきましょう。

英語と日本語では文章展開の順序が異なります。日本語では細かいところから説明して最後に「~だから○○なんだ」と締めますが、英語では最初に「理由は○○だ」と結論を述べます。細かい説明はその後です。

そのため、理由の一文目では「(○○と思う理由は)○○だからだ」という太字の部分を端的に説明する必要があります。

このそもそもの構造については以前別の記事で説明しましたので、上の説明で消化不良の方は下記をご覧ください。

「何が」「何と比べて」「何をすると」?

理由の一文目の文章を見ていてよく感じるのが、「何が(何の)?」「何と比べて?」「何をすると?」という情報が欠けているなということです。

その文章の直前に、「○○のメリットを3つ挙げます。」などという文章があれば、「安い」「軽い」「速い」だけでも成立するでしょう。

でもそうした明確な一文が無い場合は、たとえ「分かりきっている」と思っても、主体を明記した方が親切です。

何かと比較した場合のメリットを挙げているなら「○○は××と比べて安いからだ」などと比較対象が必要ですし、何かの結果を説明しているなら「○○をすると作業効率が上がるからだ」などと条件・前提を明記すべきです。

具体的には下の例文を見て頂くのが早いと思います。

【例文】理由の一文目

何パターンか用意しましたので、例を見ながら「言葉足らず」のイメージを掴んで頂ければ幸いです。

例1:デジタル機器を授業でもっと活用した方がいい。

例えば上の主張の理由として「デバイスを使った方がノートを取るのが楽だから」というのを挙げたい場合、下のような文章を書いてくれる人は多いです。

【理由】デジタル機器を使った方がノートを取るのが楽。
    First, students can take notes efficiently.

でもこの英文には、「デジタル機器を使った方が」とか、「デジタル機器を使えば」という情報は無いんですよね。

自分としては「デジタル機器のメリットを語っているんだから無くても問題ないだろう」と思うかもしれません。でも、「手書きの方がノートテイクが楽な人」にとっては上の英文だけ見せられても一瞬「えっ?」って戸惑う訳です。

前後の文章を読めばもちろん理解できますが、理由の一文を読んだだけで要点が分かるのが理想です。

例えばこの理由なら、下のように「デバイスを使えば」とか、「デバイスを使った方が」という情報を入れた方が一文で何のメリットを語っているのかが一目瞭然になり親切です。

【理由】デジタル機器を使った方がノートを取るのが楽。
    First, students can take notes efficiently.

⇒ Students can take notes quickly if they use a computer or smartphone.

⇒ Students can take notes more efficiently using a computer than manually.

⇒ Students can take notes quickly with a digital device.

A digital device will allow students to take notes more efficiently.

別の理由で下記を考えてみましょう。

【理由】電子化すれば紙の消費が減らせる。
    First, teachers can reduce paper consumption.

この理由の文章にも、「電子化すれば」という情報はありませんね。

何をすれば」(紙の消費が減らせるのか?)の情報も入っていれば、この一文が「電子化のメリット」を述べていることが一目で分かります。

【理由】電子化すれば紙の消費が減らせる。
    First, teachers can reduce paper consumption.

⇒ Teachers can reduce paper consumption by introducing digital devices.

If they use digital materials, paper consumption can be reduced.

Digital devices will help to decrease paper consumption at school.

⇒ Students do not need to use much paper if they use personal devices during classes.

If schools use more technology in classes, it will facilitate a paperless environment.

例2:オンラインよりも対面のコミュニケーションを大事にすべきだ。

トピックを変えて、上の主張をする場合の理由の文章を考えてみましょう。

【理由】対面の方が活発な議論が出来る。
    First, people can have a more productive discussion.

例えば、上のような理由を書いてくれる人は多いですが、この英文にも「何をすれば」という情報が抜けていますよね?

オンラインの方が話しやすい人もいれば、対面の方が話しやすい人もいます。自分の中では「対面の方が実のある議論ができる」と思っていても、「対面の方が」と書いてあげないと、相手には伝わりません。

もちろん前後の文章を読めば理解はしてもらえますが、先ほども述べた通り、理由の一文は「結論」を述べる部分で、英語ではめちゃくちゃ重要な文章です。この一文だけを読めば理由が理解できることを、読者は期待しています。

この例で言えば、「対面の方が」という情報はこの理由の一文には不可欠な情報といえます。もし、「オンライン」と比較しているなら、比較対象も必要です。

【理由】対面の方が活発な議論が出来る。
    First, people can have a more productive discussion.

⇒ People can have a more productive discussion face-to-face than online.

⇒ It is easier to discuss something complicated in person than online.

⇒ Discussion can be more productive if people talk face-to-face than online.

違う理由を考えてみましょう。

【理由】オンラインでは相手の変化や状況に気付きづらい。
    First, people cannot notice subtle changes in others.

先の例と同じように、上の理由であれば、「オンラインでは」という情報も必要ですね。また、「対面」と比較して「オンラインの方が」と言いたいなら、比較対象も明記した方が圧倒的に親切です。

【理由】オンラインでは相手の変化や状況に気付きづらい。
    First, people cannot notice subtle changes in others.

⇒ People cannot notice subtle changes in others online.

⇒ It is difficult to notice others’ changes in attitudes or conditions online.

Face-to-face communication is easier for people to catch subtle changes or feelings of others, compared with online communication.

例3:日本は外国人労働者をもっと受け入れるべきだ。

またトピックを変えますね。上の考えを主張する理由として、下の理由を挙げるとします。

【理由】受け入れれば、労働人口が補填できる。
    First, Japan needs more workers.

この場合も、続く説明の内容によっては上の英文だけで通じることは多いと思いますが、「外国人労働者を受け入れれば○○が解決できる」とか、「外国人労働者で労働力を補填する必要がある」などとすると、より明確な理由の一文になるでしょう。

【理由】受け入れれば、労働人口が補填できる。
    First, Japan needs more workers.

Workers from foreign countries can supplement the shortage of workforce in Japan.

⇒ Japan can maintain the workforce by accepting more foreign workers.

If Japan accepts more workers from other countries, we can increase the working population.

It will help to solve the problem of the shrinking working population in Japan.

最後の文章の it は「外国人労働者を受け入れること」を指しています。この文章の前にそうした内容の話をしていることが前提になります。

別の理由の文章を考えてみます。

【理由】外国人労働者を増やすことは、日本のビジネスの国際化に役立つ。
    First, Japanese companies can be more globalized.

上の文章も先の例と同様に、「~をすれば」という情報が欠けていますね。

「外国人労働者を増やすこと」のメリットを述べたいなら、それが分かるように「~によって」「~をすれば」という情報も書きましょう。そこまで書けば、理由の一文だけで「何にどういうメリットがあるのか」を伝えられます。

【理由】外国人労働者を増やすことは、日本のビジネスの国際化に役立つ。
    First, Japanese companies can be more globalized.

⇒ Japanese companies can be more globalized by accepting people from other countries.

Increasing foreign workers will help Japanese companies gain global perspectives.

⇒ Business persons in Japan can get international perspectives by working with people from other countries.

It may help Japanese businesses to expand globally.

最後の文章の it は「外国人労働者を受け入れること」を指しています。この文章の前にそうした内容の話をしていることが前提になります。

例4:再生可能エネルギーの割合は増やし過ぎるべきではない。

【理由】再生可能エネルギーの電力供給量は安定的ではない。
    First, we cannot receive a sufficient amount of power stably.

上のように、「再生可能エネルギーでは」という前提情報を明記せずに理由を書く人はとても多いです。

繰り返しになりますが、この文章だけを読んだ場合、これが「再生エネルギーに限定した話」であることは分かりません。書いてあることは「安定した電力が得られない」ということだけです。

「再生可能エネルギーの話をしているのだから無くても通じるだろう」と考える人がいるかもしれませんが、「条件」や「前提」は明記しない限り相手には伝わりません。読み手が誤解しても文句は言えません。

【理由】再生可能エネルギーの電力供給量は安定的ではない。
    First, we cannot receive a sufficient amount of power stably.

⇒ We cannot receive a stable power supply if we rely too much on renewable energy.

Renewable energy cannot generate a sufficient amount of power stably.

⇒ It is too risky to rely mainly on renewable energy because of its unstable power supply.

別の理由も見てみましょう。

【理由】多くの再生可能エネルギー技術はまだ発展途上。
    First, most technologies are new or under development.

これも同じですね。「何の技術」について話しているかはとても重要です。必須情報のため、省略せずに明記しましょう。

【理由】多くの再生可能エネルギー技術はまだ発展途上。
    First, most technologies are new or under development.

⇒ Many renewal energy technologies are under development or progress; thus, they are still unreliable.

⇒ It is too early to transition from fossil fuels to new, developing renewable energy technologies.

⇒ It is too risky to rely on untrustworthy, new renewable energy technologies.

例5:英語教育の低年齢化には反対だ。

最後のトピックです。

【理由】英語よりもまず日本語をしっかり学んだ方がいい。
    First, Japanese is more important.

上のような理由の文章もよく見ますが、意図としては「英語よりも」という情報が皆さんの脳内にはあるはずです。

比較対象はとても重要です。「言わなくても分かるだろう」と思わず、しっかり明記しましょう。

【理由】英語よりもまず日本語をしっかり学んだ方がいい。
    First, Japanese is more important.

⇒ Children should focus on mastering Japanese, instead of learning a foreign language.

⇒ It is more important for people at younger ages to master Japanese than to learn English.

⇒ It is better for children to learn Japanese perfectly before learning a foreign language.

別の理由の例です。

【理由】英語よりも他に優先すべきものがある。
    First, children should learn other things.

これもポイントは同じですね。上の英文には「英語よりも」という情報がありません。

「英語教育について述べているのだから書かなくても分かるでしょ」ではなく、むしろその「英語」がどう関わっているのかが分かるように明記したいです。

【理由】英語よりも他に優先すべきものがある。
    First, children should learn other things.

⇒ There are many things that children should learn before English.

⇒ It is more important for children to acquire life skills, such as internet literacy, than a foreign language.

⇒ Other skills or knowledge should be prioritized over English in child education.

おわりに

英語のエッセイ課題では自分の主張を裏付ける根拠・理由の説明が重要ですが、その文章に「言葉が足りないな」と思われるケースが多いです。

自分の中では当たり前で「書かなくても分かるだろう」と思う情報でも、きちんと明記することが大事です。何度も繰り返す必要はありませんが、理由の一文目はその一文で端的に「理由」を説明する文章ですから、必須情報を省略している場合ではありません。

「何が」「何と比較して」「何をすると」という情報は特に重要です。読み手は自分と同じ思考をしているとは限りませんので、こうした前提情報はしっかり明記し、誤解のないように書いてあげると親切です。分かりやすさも格段に増しますよ。

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