エッセイや論文のイントロダクションではトピックの背景情報を説明しますよね。
論文では先行研究や既知情報を紹介します。短いエッセイでも、そのトピックについてどんな意見や議論が為されているのかをさらっと紹介したりすると思います。
そこで今回は、そんな背景説明や導入でよく使う「議論」系の単語を集めてみました。
背景で何書こう・・・と迷ってしまった時は、逆にこれらの単語から逆算してみると何かアイデアが浮かぶかもしれませんよ。気になるものがあれば、是非使ってみてくださいね。
エッセイの導入・背景説明でよく使う英単語
論文やエッセイのイントロダクションでは問題提起やそのトピックにまつわる背景の説明をします。
- これまでに○○ということは分かっているが、××はまだ分かっていない。
- ○○と考える人がいるが、××という反対意見もある。
- 現在、○○である。これには××という問題がある。
こういう文脈でよく使う単語を勝手に「議論」系と呼ぶことにします。笑
- argue
- debate
- discuss
- criticize
- controversial
- contradict
- consensus
今回は、この7つの単語の使い方を例文を使ってご紹介します。
argue
argue:[動](~について)議論する、(~を)主張する
賛否両論ある問題については既に議論されている内容も多いと思います。現在までにどんな議論が為されているかという背景説明には非常に便利ですよ。
後ろに前置詞(about, against, for)、名詞句、that 節のどれも取れるため、汎用性が高く使いやすいです。
This article argues about the potential bias in the results of previous studies.
本稿では先行研究の結果にあるバイアスの可能性について論じている。
The authors argued against the use of smartphones of children under ten years old.
著者らは10歳未満の子どものスマホ使用に反論している。
Economists strongly argue the need to educate money literacy in Japanese schools.
経済学者は、日本の学校でマネーリテラシーを教育する必要性を強く主張している。
Opponents would argue that this legislation will lead to further restrictions on freedom of speech.
反対派は、この法案が言論の自由をさらに制限することにつながると主張するだろう。
debate
debate:[動](~について)議論する・論争する、[名] ディベート、議論、論争
「ディベート」はカタカナ語にもなっていますし、馴染みがある方も多いですよね。賛否両論ある問題や解決していない問題だと絶対に議論が行われているはずです。冒頭の導入としては便利ですよ。
ただ、与えられている問題のトピック自体の説明に使うのはおすすめしません。例えば、「オンライン授業の導入に賛成ですか、反対ですか?」というトピックのエッセイで、「オンライン授業の導入の是非については議論が続いている」みたいな文を書くとか。
エッセイのトピックは賛否両論あるものをわざわざ選んでいるのですから当たり前で、上の文章には率直に言って中身が何もないからです。トピック自体ではなく、あくまで何か個別のアイデアや方法を提示・提案するなどして、それについて「賛否が議論されている」とするなど、内容的な使いどころには気を付ける必要があると思います。
debate は自動詞でも使いますが、about や on を後ろに置いて「~について議論する」という形で使うことが多いかもしれません。
People have been debating on whether the advantages of social media outweigh their disadvantages.
ソーシャルメディアのメリットがデメリットを上回るかどうかが議論されている。
This policy has pros and cons, which should be debated thoroughly before drawing a conclusion.
この方針には賛否両論があり、十分に議論した上で結論を出すべきである。
名詞だと語数が増えてしまうので個人的には控えるようにしているのですが、名詞で使う文章もよく見ます。名詞を使った方が書き易い文脈も絶対ありますしね。
There has been a long debate on allowing the separate surnames of married couples.
夫婦別姓を認めるかどうかについては、長い間議論が続いてきた。
We had a productive debate on teleworking policies of our company.
会社のテレワーク方針について実りのある議論ができた。

discuss
discuss:[動](~について)議論する・検討する、話し合う
Discuss は他動詞なので、後ろに on や about は不要です。「discuss about」としてしまう間違いはとても多くて、添削でもよく減点します。もったいないので是非この機会に覚えてしまいましょう。
In their report, the authors discussed the reliability of evidence on the effectiveness.
その報告書の中で、効果に関するエビデンスの信頼性について議論されている。
At my school, students and teachers discussed the current issues regarding online classes.
私の学校では、生徒と教師がオンライン授業に関する現状の問題点を話し合いました。
Specialists have been discussing the encouragement of digital devices at public schools.
専門家の間で、公立学校におけるデジタル機器の推奨が議論されている。
This literature review discussed the existing knowledge on this issue and provided future perspectives.
この文献レビューでは、この問題に関する既存の知見を議論し、今後の展望を示している。
criticize
criticize:[動](~を)批判する・非難する
既存の考えや方法に対する批判があり、それが問題提起になったり、そこから別の可能性・アイデアが生まれるというのは自然の流れです。具体的に現状どういう批判がされているのかを紹介するといった文脈は論文やエッセイではよくあると思います。
criticize の目的語は批判の対象です。人でも物事でも構いません。
Although some people criticize this policy, we should focus more on its benefits.
この政策を批判する人もいるが、私たちはもっとこの政策のメリットに注目すべきだ。
People are more likely to criticize others easily in the online world, probably due to anonymity.
ネットの世界では、匿名性のためか人は簡単に他人を批判しがちだ。
Some people criticize that online classes deprive students of opportunities for between-friend interactions.
オンライン授業は友達との交流の機会を奪うという批判もあります。
Criticizing someone’s opinion should be entirely different from denying the person’s integrity as a human being.
誰かの意見を批判することと、その人の人格を否定することは全く違うはずだ。
controversial
controversial:[形] 議論の的になる、物議を醸す、論争を巻き起こす
決着がついていない事柄を形容するときに便利なのが形容詞の controversial です。
便利ではあるのですが、上の debate の所で話した通り、問題のトピックそのものについて書くのは避けましょう。「夫婦別姓についてのあなたの考えを教えてください」というトピックのエッセイの冒頭で、「夫婦別姓を認めるかどうかは近年議論の的になっている」とか書かれても、内容が無さ過ぎて(当たり前すぎて)何も面白くありません。Controversial なトピックだからこそエッセイのテーマになり得るんです。トピックそのものについて使うのではなく、あくまで一歩踏み込んだ内容について説明する際に使いましょう。
Euthanasia is a controversial issue in Japan.
安楽死は、日本で論争の的となっている問題だ。
This is a controversial topic among specialists in this field.
これについては、この分野の専門家の間でも賛否両論がある。
The effectiveness of this practice is still controversial.
この方法の効果についてはまだ議論の余地がある。
The trend of restricting freedom of speech is increasingly controversial.
言論の自由を制限する風潮はますます議論を呼んでいる。
contradict
contradict:[動](~と)矛盾する・相反する
エッセイではあまり使わないかもしれませんが、論文ではよく使います。先行研究や既知の見解で対立・矛盾したものが報告されている場合に一語で表現できるので便利です。他動詞のため、with などの前置詞は後ろに不要です。
Several studies examined the efficacy of this treatment, but their results were contradicting.
いくつかの研究でこの治療法の有効性が検討されたが、その結果は相反するものであった。
Although previous studies reported positive findings, recent studies provided contradicting results.
これまでの研究では肯定的な結果が報告されていたが、最近の研究では相反する結果が得られている。
Recently obtained evidence contradicts the existing knowledge.
最近得られた証拠は、既存の知識と矛盾している。
The government’s survey revealed that students’ honest opinions contradicted the teachers’ and parents’ expectations.
政府の調査では、生徒の率直な意見が教師や保護者の期待と食い違っていることが明らかになった。
consensus
consensus:[名] 意見の一致、総意
最後は名詞の consensus です。賛否両論ある議題や、選択肢の優劣(序列)が決まっていない時などに、「○○については未だコンセンサスが得られていない」という否定の形でよく使います。
The government and physicians have not reached a consensus on the best strategy to suppress the infection.
感染を抑制するためのベストな戦略について、政府と医師の間で未だコンセンサスが得られていない。
A consensus has yet to be achieved whether the benefits of this service outweigh the risks.
このサービスのメリットがリスクを上回るかどうかについては、まだコンセンサスが得られていない。
This issue has been discussed but remains to reach a consensus on how to address it.
この問題は議論されてきたが、どのように対処するかについてはまだコンセンサスが得られていない。
もちろん、「○○についての意見は一致している」という文脈で肯定文でも使いますよ。
The consensus among employees is that teleworking does not reduce work productivity.
従業員たちの意見で一致するところは、テレワークは仕事の生産性を下げないということだ。
「賛成」vs. 「反対」の英語表現
上の例文でもいくつか使っていますが、議論系の文脈では「賛成 vs. 反対」「メリット vs. デメリット」を述べることが多いと思います。対で使う表現はセットで覚えておくと便利ですよ。
- 賛成 vs. 反対
-
agree vs. disagree
- 良い点 vs. 悪い点
-
pros vs. cons
- メリット vs. デメリット
-
merit vs. demerit
- 利点 vs. 欠点
-
advantage vs. disadvantage
- ベネフィット vs. リスク
-
benefit vs. risk
賛成・反対双方の立場に触れながらも自分の「主張」を展開するときのポイントについては以下で解説していますので、良ければご覧ください。

おわりに
「議論する」みたいな文脈で頻繁に使う語彙を集めてみました。実際論文を読んでいてもこういう文章はよく見ます(お決まりの文章みたいな感じでいつも使っている人もいるかもしれません;笑)。
イントロダクションで書く内容が思いつかない場合は、こういった「単語」から逆に何か書けないか考えてみるのもいいかもしれません。もし使い慣れていないものがあれば、是非次回のライティングで使ってみてください。